事業領域と戦略設計の考え方



経営設計研究グループでは、「事業領域と戦略設計の考え方」についての企画提案をしてきました。
事例内容は流通業(小売業)の表現が多いですが、業種・業態にはとらわれません。
その内容を整理してみました。
IBC 田中 淳視


1 事業領域の捉え方

企業にとって、“事業領域(ドメイン)”と“戦略”は必要不可欠な要因です。

まず、“事業領域”とは何か。


上記の例は、セオドア・レビット氏(ハーバード・ビジネススクール教授)の著名な『マーケティング近視眼』という論文の一例です。

そして同氏は、鉄道会社が事業領域を「鉄道」から「運輸」に定義し直していれば、状況は変わっていただろうと述べています。

我が国のように、運賃一つをとっても企業が勝手に決められない“強力な規制下”にある業界は難しいかも知れませんが、上記の例が示唆するように、「事業領域をどう定義するか」によって、企業の戦略が大きく左右されることは明白です

しかし、ここで見極めるべきことは、上記の例の示す時代の事業領域と、現在に捉えるべき事業領域とは些かその対象が異なってきていると言うことです。

  前者の場合は、「鉄道」を「運輸」に捉え直すということですが、どちらにしてもあくまで“産業名”であり“産業枠”だと言えます。

  一方、後者(現在)の事業領域の捉え方は、産業名や産業枠を超えたところにあります。
  例えば、“ソニー”の事業領域などは、“音楽(ソフト・ウェア)”でもなければ“AV機器(ハード・ウェア)”でもありません。
  かと言って、“ロボット(コンピューター)”や“通信(配信)”でもなければ、最近力を入れている“電子マネー(金融)”でもありません。
  また、不況と言われる中で成長を続ける“ウォルト・ディズニー”ないし“オリエンタルランド(東京ディズニーランド)”の事業領域はどうでしょうか。

  “キャラクター・メーカー(製造)”でなければ“プロダクション(映画・制作)”でもありません。  それに“キャラクター・ショップ(小売)”でもなければ“テーマパーク(アトラクション施設)”でもないのです。 

この両社は、誰もが認めるように“業務内容”は(現段階では)全く異なります。

  けれども、どちらも業務領域は“エンターテイメント”なのです。 

もはや、今日の“事業領域”の捉え方は、業種や業態、あるいは業界のくくり(枠)を超え、思想的な“世界感(ワールド)”や“独創観(イメージ)”に移行しています。