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ITシステム構築環境の進化
 

 ITシステム構築の環境はITとネットワーク技術の発展と共に大きく進化しています。汎用機の時代はIBM、NEC、富士通、日立などのメーカが各社独自のハードウェア、OS、アプリケーション、開発方法論などを利用者に提供していました。その後、ハードウェア、OS、DB、ネットワークなどの標準化(国際標準、業界標準)が進み、標準OSと標準MPUを搭載したコンパクトなサーバとPCをクライアントとするいわゆる「クラサバ」が普及しました。更にインターネットの普及に伴なって世界中のサーバやPC、携帯電話などがつながるようになりました。サーバとクライアントも同時並行的に進化し、クラウドコンピューティング(以降クラウドと略)の名の下に、サーバは世界に分散設置するデータセンターに集約され、アプリケーション・プログラムはデータセンターで実行し、クライアントはPCだけでなく、スマートフォンやタブレットなども利用できるようになりました。

 このように、ITシステム構築の環境は大きく進化しています。現在は、

  多種類のサーバ + 多種類のクライアント
 (Multi-Kinds of Server + Multi-Kinds of Client:以下ではMK-S&C と略)

の時代になっています。

 システム構築に使用するサーバは自社のものだけでなく、クラウド上のサーバ(サービスも含む)を利用でき、クライアントはPCだけでなく、目的に応じた多様な端末機器が利用できます。

 システムのサーバにクラウドを利用すると、ハードウェアやアプリケーションの保守を専門業者に任せて、コストパフォーマンスを上げることができます。中小規模企業にとって、自社にコンピュータやネットワークの専門家がいて、サーバを購入して自社で運用する時代は終わりつつあります。

 クライアントがPCのみの時代も終わり、現在ではスマートフォンやタブレット、軽量でキーボード付きのタブレットタイプのPCまで現われました。無線LANも普及し、WiFiやWiMaxが使われ始めました。どこにいても適切なクライアントを使って同じ情報源にアクセスできます。

 MK-S&Cというシステム構築環境はシステム構築費用の大幅削減とIT化対象領域の拡大という効果をもたらしました。MK-S&Cは進化したコンピュータ技術と通信技術によって支えられています。

 MK-S&Cを支える主な技術はクラウド、多種多様なクライアント端末とそれらをつなぐインターネット(Web技術)です。

 はじめに取り上げなければならないのはインターネット技術です。物理的な通信手段として電話回線、無線、光通信など各種ありますが、物理的通信手段が異なる機器間で通信可能とするために上位の通信プロトコルを合わせています。現在の各機器は、物理的通信手段の上位にインターネット・プロトコルTCP/IP(パケット通信)、(途中のプロトコルは省略しますが、)最上位にはWeb技術(HTMLや各種スクリプトなど)の共通プロトコルを採用しています。その結果、あらゆる機器がインターネットでつながり、システムとして連携できるようになっています。

 2つめの重要な技術はクラウドです。クラウドという呼称は最近使われはじめました。その考え方は昔からありました。高速通信やインターネットが現われたことにより実現したものです。クラウドにはいくつかのタイプがあります(前稿:クラウドコンピューティング参照)が、本稿ではSaaSに注目します。インターネットにつながる大規模なサーバでアプリケーションを動作させ、インターネットにつながるクライアント端末からそのアプリケーションを利用できるようにするサービスです。クラウドコンピューティングの良さはハードウェアやネットワーク、アプリケーションの保守などのすべてを専門事業者に任せ、しかもその費用は自らサーバを運用するのに比べ、大幅に減らすことができ、またセキュリティについても保障してもらえる点にあります。アプリケーションによっては利用者がカスタマイズできるものもあります。また、前項:クラウドコンピューティングでは述べていませんが、PaaS(Platform as a Service)と呼ばれるクラウド上でシステム開発するために必要なプログラミング言語や各種ツール、APIを提供するサービスがあります。PaaSを使用して自らSaaSを提供することも可能となっています。今後クラウド上にいろいろな分野の様々なアプリケーションサービスが提供されるようになるでしょう。

 MK-S&Cを支える3つめの技術は多種多様なクライアント端末です。インターネットにつながるクライアントはPC、スマートフォン、タブレットだけでなく、各種センサー付き端末など様々です。今後も目的に応じていろいろなクライアント端末が登場するでしょう。ビルメンテナンス、農業支援などをはじめ、自然界とのつながりにはセンサー付きの端末が重要となります。

 MK-S&CはITシステムの開発方法を変えました。何から何まで自前で開発していた汎用機の時代にはモジュール化が進みましたが、プログラマが意識を集中しなければならない一つひとつのモジュールとその数の多さ、モジュール間のインターフェースの複雑さのため、あるモジュールを変更するとそれと関係して変更を強いられるモジュールに何があるかなど、コード化する前に慎重に設計しなければなりませんでした。ウォーターフォルはそのような開発に適した開発方法でした。現在でも、将来も大規模で複雑なシステムの開発にはウォーターフォルは必要とされています。しかし、MK-S&Cでは各種機能がアプリケーションや関数形式のAPIとして提供されているため、Web技術を駆使するだけでITシステムを構築することが可能となりました。もし存在しなければPaaSを使って追加すれば良いのです。

 このように、MK-S&Cではソフトウェアの部品化が進んでいますので、システムの一部から開発に手を付け、少しづつ完成に近づけて行く、いわゆるアジャイル方式が適用できます。

 MK-S&Cは大企業だけでなく、中小企業や個人事業者も変わりなく、廉価で使用できます。また、技術的にもIT化し難かった領域でも容易に導入し易くなっています。正にMK-S&Cは社会やビジネスに革新(イノベーション)を起こす起爆剤と言えましょう。